テーパー管(コーン、レジューサー)をロール曲げで製作することが可能ですので、その一部である当て板もロール曲げで製作することは可能です。
(参考記事:テーパー管(レジューサー/コーン)はロール曲げできますか? 陣笠は?)
まず、通常の(筒状の)テーパー管の展開図は下図のようになります。
わかりやすいように40分割で曲げ線を描いてみました。
ここで、1/10円分(=36度分)の当て板を製作したいとします。
1/10円分ですので、40分割したうちの4個分がその展開板になります。
この板を通常のテーパー管と同じ要領で曲げれば当て板の完成です。
さて、極まれに「わざわざ展開して扇板をレーザーで切断すると材料費が高くなってしまうので、単純な長方形の板でテーパー管の当て板を作りたい」という要望があります。実現は不可能ではありませんが、手間がかかって加工費が高くなる割に精度が出せないため弊社ではおススメしておりません。
以下、理由を説明します。
まず、先ほどの1/10円分と同じような大きさの長方形を用意するとします。
板が長方形であろうとテーパー管の形状に曲げるための曲げ線は変わりませんので、下図のようなケガキを描き入れることになります。
ここで、扇の板からテーパー当て板を曲げる場合と、長方形の板からテーパー当て板を曲げる場合の違いを見ていきます。
扇の板の場合、それぞれの曲げ線に注目すると、どの曲げ線をみても板の端面(パイプの口になる部分)と曲げ線がほぼ直交していることがわかります。(※扇は直線ではないので厳密には直交ではありませんが、無限に拡大していけば90度で交わっていると言えます。)
これらの曲げ線が3本ロールのシリンダーと常に平行になることを意識して曲げていくと、曲げ線に対して常に対称に曲がっているので、端と端が近づいてテーパー管の形状になっていきます。
一方で長方形の場合、板の真ん中のケガキ線で曲げる時は3本ロールのシリンダーと板の端面が直交しますが、それ以外の時は直交しないことがわかります。特に、板の端に行けば行くほど90°からずれていきます。
これらの曲げ線が3本ロールのシリンダーと常に平行になることを意識して曲げていくと、板はねじれるように曲がっていき、板の両端がくっ付くどころか逆に離れていってしまいます。
なお、今回わかりやすく説明できるように扇の板にも曲げ線を入れましたが、慣れてくると板を見れば扇の中心がどこなのか頭の中でイメージできるので(扇の両端の線が交わるところが中心)、ケガキ線もイメージできるようになってきます。そうなると、ケガキをしなくても曲げられるようになります。
一方で長方形の場合は、板を見てもどこが扇の中心なのかわからないので、寸法を計算して実際にケガキを入れる必要があります。
つまり、長方形の板でテーパー管の当て板を曲げようとすると、
① 板にケガキを入れるという余計な手間がかかる(コストが増える)
② ねじれが加わって上手く曲がらない(精度が出ない)
という問題が発生するのです。
以上から、弊社ではテーパー管の当て板を長方形の板で曲げることはおススメしておりません。しかしながら、精度は気にせず、曲げ加工費が増えてもレーザー切断費が増えるよりマシだというケースもあるかと思います。そのような場合にはご要望にお応えしておりますので、ご相談いただけますと幸いです。