2022年3月21日月曜日

スリットを入れればロール曲げできる?


「穴を開けてしまうと曲げられないと思うので、スリット(ミシン目)を入れた状態 でロール曲げしてもらえますか?」

弊社でよくいただくご要望の1つです。スリット(ミシン目)の方が穴と比べて影響が少ないのは間違いないのですが、実際にはほとんど変わらないと言っても過言ではありません。

以下、詳しく説明していきます。

ロール曲げの機械であるベンディングロールは、究極に単純化すると以下の3本ロール構造になっています。

この構造で板を曲げる仕組みはブレーキプレスの折り曲げと同じで、板を下の2点で支えながら上の1点で押すことです。

さて、例えば角パイプが刺さる下図のような板巻き管を作りたいとします。

この板巻の展開板は下図の通りです。

もし板の状態で穴を開けてから曲げるとすると、下図のようになります。

穴のところの断面を見ますと、穴の隣の部分は下からの支えがありませんから、上からの力が伝わらずに逃げてしまうことがわかります。したがって、その部分は平らなまま(あるいは平らに近い状態のまま)残ってしまうのです。

では、下図のようなスリットを入れたらどうでしょうか?

断面で見ると良くわかる通り、スリットがあるところは板が断絶されているわけですから、結局は穴が開いた状態と変わらないことになります。

かろうじて繋がっているのはスリットの残っている部分だけですので、そこに全ての力がかかります。そうなりますと、平らなまま残ってしまうだけではなく、結局ポキッと断裂してしまうことさえあるのです。(以前に書いた「穴やスリットの入った板をロール曲げするとどうなるのか?」の記事に写真があります。)これではせっかくスリットで残しておいた意味が全くありません。

したがって、この問題を防ぐには下図のようなスリットにする必要があります。

こうすれば断面で見ても断絶されているところはありませんから、穴の隣の部分も下から2点で支えられて力が逃げずに伝わり、板を曲げることが可能です。

整理しますと、「円周の方向にはスリットを入れても問題ないが、円周と垂直方向にスリットを入れると曲げることができない(スリットで折れ曲がってしまう)」となります。

それでは、後工程で切断するのが難しい等の理由で、どうしても先に穴やスリットを入れておきたい時はどうしたら良いのでしょうか?

先ほど、穴が開いた状態で曲げると”穴付近は平らなまま残ってしまう”と書きました。この現象は穴やスリット部分以外でも起きる箇所があります。お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、それは板の端です。(詳細は「ロール曲げの端(はな)曲げ加工とは?」をご参照ください。)

つまり、端曲げと同じ工程で曲げることで、穴やスリットがあっても平らに残さずに曲げることが可能なのです。

ただし、穴やスリットの数の分だけ端曲げ工程が必要になりますので、その分コストがかかります。また、穴と穴の間隔(あるいはスリットとスリットの間隔)が狭すぎると、「これ、ロール曲げで曲がりますか?」の記事の「③板が短過ぎて機械に載らない」と同じ状態になりますので、やはり曲げることはできません。

弊社では、以上を考慮した上で、後工程で切断する場合のコストと比較ご検討いただき、最適な解決策となるように穴やスリット形状の提案をさせていただいております。

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