「これはロール曲げで曲がりますか?」
お客様から最も良くいただく質問の一つです。
・キズを付けたくない
・低コストで作りたい
・規格パイプが無いので1シームの板巻で作りたい
など、様々な理由があって「ロール曲げで加工したい」という思いからお問い合わせいただいているわけですから、気持ちとしては毎回「大丈夫です」と回答したいのが本音です。しかしながら、どうしても無理な時があります。
ではなぜロール曲げで加工できないのか?
一言で表しますと、「機械の仕様で決まってしまうから」です。
ロール曲げは人間が常にボタンを押しながら機械を動かすアナログ的な加工方法なので、曲げ精度や加工時間は加工者の腕に左右されます。しかし、可否に関しては「機械の仕様」に尽きるのです。
ベンディングロール(ロール曲げの機械)は3本ロールと呼ばれ、各機械によって
・ロール長
・トップロールとボトムロールの隙間
・ボトムロール間隔
・トップロール径
・加圧力
が異なります。そして、これらの仕様によって曲げの可否が決まるのです。
以下、詳しく説明していきます。
1)そもそも機械にセットできないケース
当然ながら、ロールの長さより幅が広い板は機械に入りませんので曲げられません(①)。また、トップロールとボトムロールの間の隙間に入らないような厚い板も曲げられません(②)。さらに、これは見落とされがちなのですが、ボトムロール間隔より短い板も曲げられません(③)。③の状態は、「機械に載らない」とか、あるいは橋がかからない状態に似ていることから「機械にかからない」と表現されます。
2)曲がり切らないケース
これも当然ながら、トップロールの直径より小さい曲げ径には曲げられません(④)。例えばトップロールがΦ80の機械で直径Φ70に曲げられないことは明らかです。さらに、スプリングバック(※)がありますので、単純にΦ80より大きいからと言ってΦ81が曲がるわけでもありません。(※詳細はロール曲げのスプリングバックの記事をご参照ください。)
さて、最初に、仕様は機械によって異なると書きました。そうなりますと、例えば④のようにトップロールが太過ぎるのであれば「もっと細いトップロールの機械を使えば良いではないか」と思われるかもしれません。しかしながら次の問題が出てきます。
3)機械の力が足りないケース
ベンディングロールの加圧力には限界があります。弊社では6台中5台が油圧式で、残りの1台が電動式です。油圧式は油圧ポンプの性能によって、そして電動式であればモーターの性能によって、それぞれ加圧力が決まってしまいます。
加圧力が大きくなればなるほど、機械自体もその力に耐えられるようにしなければなりませんから、当然ながらロールが太くなります。したがって、④の時に「もっと細いトップロールの機械を使えば良いではないか」と考えても、「細いロールでは力が足りない」となってしまうのです。
それでは具体的に「力が足りない」とはどのような状態なのでしょうか?
この疑問に答えるには、「ロール曲げを行うにはどのぐらいの力が必要なのか」を計算する必要があります。この点については『「端だけ曲がらない」のはなぜ? ロール曲げに必要な力とは』の記事で詳しく説明してありますのでご参照ください。
また、「とりあえずロール曲げの可否を知りたい」というお客様のために簡易的なロール曲げ可否自動判定ページを用意しております。どうぞご利用いただけますと幸いです。
最後に・・・
端曲げの記事で、ベンディングロールの構造はブレーキプレスの上下金型のようなものだとお伝えしました。ブレーキプレスであれば、金型を交換することで多様なサイズの板に対応できます。ベンディングロールは機械そのものが上下金型のようなものなので、
金型を交換する=別のベンディングロールを使う
ということになるのです。ブレーキプレス業者さんが様々なサイズの金型を用意するように、ロール曲げ業者も様々なサイズのベンディングロールを用意すれば良いのですが、1台数千万円クラスにもなる機械ですから簡単には増やせません。また、基本的には人間がボタンを押している間しか動かせない機械のため、機械を増やし過ぎると稼働率(生産性)が下がってしまうリスクが大きく、設備投資に踏み切るのが難しい面もあります。したがって、お客様がロール曲げでの加工をご希望しているにも関わらずどうしても弊社の機械で加工できない場合、知り得る限りの情報の中から競合他社であっても紹介させていただくことがあります。これは、その方がお客様の事業を支えるお役に立てると考えているからです。全てのロール曲げ加工に弊社の機械で対応することができず大変申し訳ございませんが、何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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