2022年10月8日土曜日

曲がった板を平らにできますか?

 「曲がった板を平らにしたいのですが、ロール曲げでできますか?」

このようなお問い合わせを時々いただくことがあります。

条件によっては可能です。

種明かしをしてしまいますと、下図のように板を裏返した状態で機械に入れることができればロール曲げで板を延ばして平らに近づけることができます。

理屈はこれだけです。同業他社が見ているかもしれないのにやり方を公開してしまって良いのかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。理屈は簡単ですが、実際にやるのは非常に難しいのです。

普通のロール曲げは平らな板の状態から円筒状(またはアーチ状)に曲げます。この工程は単純な形状であればNC化できていて、自動機械も存在します。

一方ですでに変形した板を平らにする場合は、まず初期条件が不明です。どの程度曲がっているのか、一定のRで曲がっているのか、ねじれはないか、摩耗して板厚が薄くなっていないか、経年劣化で板の性質が変わっていないのか、など、挙げればキリがありません。

板を平らに伸ばす加工は、押した(曲げた)時の板の戻り具合を見ながら押す位置や量を調整したり、曲げる方向を変えたり、数値では表せない”カン”に頼った加工になります。いわゆる職人技と呼ばれるもので、自動化は不可能です(※)。

(※AIが発達すればセンサーと組み合わせることで実現可能かもしれませんが、ニーズに対して割に合わないので誰も開発しないと思われます。)

このように、板を平らに伸ばす加工は実際にやってみないとどこまで平らにできるのかわかりません。極端なことを言えば可否すらもお答えできないため、事前にお見積りすることも不可能です。できるとすれば”これ以上平らに近づくことはない”と判断できるまでの加工時間を見積もることぐらいでしょうか。

新品の板を曲げれば済む話ではありますが、このまま円安と資源不足が続いた場合、在庫不足で板がすぐ手に入らなかったり、高過ぎて予算オーバーになってしまったりといった事情で、既存の板を再利用したいというニーズが増える時代がやってくるかもしれません。

そのような時代に必要な技術力を山十佐野製作所は持っております。今後も社会の役に立てるよう自分たちの技術力を向上させ、またこの技術を次の世代に継承できるよう努力してまいります。

2022年9月10日土曜日

テーパー管(レジューサー/コーン)はロール曲げできますか? 陣笠は?

テーパー管(レジューサー/コーン)は形状によってロール曲げ可能です。陣笠は全く加工できません。

テーパー管がロール曲げ可能なので似たような形状の陣笠もロール曲げできるのではと思われることがありますが、機械の構造上不可能です。

まず、3本ロールでどのようにテーパー管を曲げているのかを説明します。下図をご覧ください。


2つめの画像は真横からみたところです。このように、トップロール(上のシリンダー)を傾けて小径側だけが強く曲がるようにして加工しています。

では同じ方法で陣笠を曲げようとするとどうなるでしょうか?わかりやすいようにトップロールを半透明にしてみました。

ご覧の通り、このままトップロールを下げると陣笠の頂点付近が曲がってはいけない方向に曲がってしまいます。したがって陣笠は3本ロールでは加工不可能です。

では同じテーパー管でも曲げられるものと曲げられないものの差はどこにあるのでしょうか?

テーパー管の小径を徐々に小さくしていくと、やがて直径Φ0mmに近づいて陣笠になります。可能・不可能の境目はそのどこかにあるはずです。テーパーロール曲げが不可能となる条件は以下の通りです。

条件1)小径にトップロールが入らない。

当たり前ですが、トップロールより小さな直径に曲げることはできません。(陣笠もこの条件に当てはまります。)

条件2)小径と大径の差が大きい。

差が大きければ大きいほど、小径側だけを強く、大径側を弱く曲げる必要がありますので、トップロールを大きく傾けなければなりません。しかし、機械の構造上、傾けられる角度には限界があります。

また、傾ければ傾けるほど機械に(油圧シリンダーに)高負荷がかかります。メーカーからは「通常の円筒の2倍~3倍の負荷がかかると考えてほしい」と言われています。曲げに必要な力は大雑把に板厚の2乗に比例しますので、テーパーロール曲げの可否を大雑把に調べたい時は、こちらのロール曲げ可否自動判定で板幅を実際の1.4(√2)倍~1.7(√3)倍で入力してみるという方法があります。ただ、残念ながら正確な可否判定は難しいというのが正直なところです。

弊社にお問い合わせいただいた場合は、過去の加工実績データベースから類似形状を一瞬で検索できるシステムも使って総合的に可否判断をしております。その結果、弊社の3本ロールで加工できないと判断した場合は、協力業者でのプレス曲げ(FR曲げ)でのお見積りを提案させていただいております。

全ての曲げ加工に対応することができず大変申し訳ございませんが、何卒ご了承いただけますと幸いです。





テーパー管(レジューサー/コーン)の板金展開時の注意点

ロール曲げ加工は円筒やテーパー管など単純な幾何学形状を加工するため、時々"t6、外Φ300、高さ200"など言葉だけの仕様で発注がかかることがあります。円筒の場合はあまり問題になることはありませんが、テーパー管の場合、特に板が厚い時は注意が必要です。

下図をご覧ください(クリックすると大きく表示されます)。

A、B、どちらも言葉だけで表そうとしたら”板厚t12、小径外Φ150、大径外Φ200、高さ50”となると思います。しかし、Aは曲げ終わった時点で高さが50mmになるのに対し、Bは下の部分をグラインダーで削らなければ高さ50mmになりません。

両者は製品形状が違うので板金展開形状も違ってきます。

パイプ(円筒)の板金展開は板厚の芯の直径に円周率を掛ければ計算できます(中立線のずれは無視できると仮定して)。テーパー管の板金展開も基本的な考え方は同じです。

上図にはAとBそれぞれの板芯の直径が書かれています。両者は違っているので展開形状も違ってくるのです。

弊社では特に指定がない場合はAで展開をしております。理由は、こちらの形状はそのまま組めば高さ50mmを確保しつつ、しかも自然開先になるからです。


一方でBは下部をグラインダーで削って高さを合わせなければならないだけではなく、必要に応じて開先も取らなければなりません。

弊社では常にお客様の手間をできるだけ減らすことを考えて提案をさせていただいております。

パンチングメタルはロール曲げ可能ですか?

 パンチングメタルはロール曲げ可能ですか?


よくお問い合わせいただく質問です。一言でお答えすると「ロール曲げ可能」ですが、R精度は通常の鋼板とは違ってしまいます。

パンチングメタルの中には、下図にように板の縁に穴のあいていないものがあります。(耳付などと呼ばれます。)

このような板は、穴のあいている部分とあいていない部分で板の強度が全く違うため、境目のところで折れたようになってしまいます。

耳付の板は、究極に単純化すると下図のような板だと考えることができます。

この形状ですと、スリットを入れればロール曲げできる?の記事で説明されている通り、縁の部分はボトムロールにかかりませんので、折れて平らなまま残ってしまうということです。

防止策としては耳のない板を用意するしかありません。ただし、実際の製作では「縁が曲がっていなくても関係ない。R精度は気にせず、無理やりにでも溶接できてしまえばOK。」ということもあります。状況に応じてご検討いただけますと幸いです。



Hardox(ハルドックス耐摩耗鋼板)の溶接

 Hardox(ハルドックス耐摩耗鋼板)の溶接に挑戦いたしました。

Hardox®耐摩耗鋼板はスウェーデン・ストックホルムに本社を置く鉄鋼メーカーであるSSAB社の鋼材で、世界有数の耐摩耗鋼板です。建機や破砕機など、摩耗が激しい部品で使用されています。国産で言えば日本製鉄社のABREX、あるいはJFEスチール社のEVERHARDが同等品となりますが、それぞれ特徴に若干の違いがあるようです。

今回溶接に挑戦したのはHARDOX450という種類で、ガイドラインを参考にして溶接したところカラーチェックで問題ない程度に仕上がりました。板厚は16mmです。

山十佐野製作所では今後も珍しい材質の加工でも積極的に挑戦してまいります。

2022年9月7日水曜日

3Dモデリングから板金展開まで

 山十佐野製作所ではいただいた図面をもとに3Dモデリングから板金展開まで行っております。

例えば以下のような製品があったとします。


こちらは架空の形状ですが、ご覧の通りテーパー管(レジューサー)に丸パイプが様々な角度で刺さっていたり、大きな角パイプが刺さっていたりしています。このような単純ではない形状の場合は3Dモデリングをして形状の認識に間違いがないように努めております。

また、弊社では3DCADを使ってモデリングした3Dデータから一気に板金展開ができるようになっております。先ほどの製品を3Dデータから板金展開したものが以下の図です。
3Dモデリングのみ、あるいは板金展開データのみでも販売しておりますのでお気軽にご相談ください。
もちろんロール曲げ加工、プレス曲げ(FR曲げ)加工※、開先加工、溶接加工まで含めたご注文もお待ちしております。

※プレス曲げ(FR曲げ)は協力業者での加工となります。

今回モデリングしたサンプル3Dデータ(STEP形式)ならびに板金展開データ(DXF形式)は以下のリンクからダウンロード可能です。どうぞご自由にご確認いただけますと幸いです。

株式会社山十佐野製作所サンプル3Dデータ・板金展開データ(ZIPファイル)

弊社はプラントエンジニアリングをメインとした製缶板金業ですので、工場の大きなタンクなど一品モノの部品を製作しております。量産モノには”不良率”という考え方がありますが、一品モノの場合は0%か100%しかありません。毎回違うものを作るわけですから、いかに正確に製作するかが品質保証のカギとなります。そのためには、まずは形状を正しく理解できなければ話になりません。

最終製品は3次元の物体です。それを伝えるための手段として図面が存在しますが、3次元を2次元に置き換えているため理解するのに苦労する時があります。そのような時、3Dデータをみれば一目で形状を理解できるでしょう。ミスが減り、時間短縮に繋がります。

今後も山十佐野製作所では3Dの力を製缶板金業に生かして、お客様のために効率化を図っていきたいと考えております。

2022年8月8日月曜日

DraftSightでAutoLISPを使うには

 本記事はDraftSightでAutoLISPを使うための情報をまとめたものです。

https://www.3ds.com/ja/products-services/draftsight-cad-software/ より

 DraftSight(ドラフトサイト)とは、フランスのダッソー・システムズ社が提供している2DCADソフトウェアです。製品の詳しい説明はWikipediaに譲りますが、業界のデファクトスタンダードであるAutoCADと非常に互換性が高いのが特徴です。以前は無償版がありましたが、残念ながら2019年からは有償版のみとなっております。

 弊社は設計部門があるわけではないので高度なCADソフトウェアは必要ありません。しかしながら、お客様から支給されたCADデータから曲げ加工図を描いたり展開をしたりといった作業が発生します。そこで、以下の条件を満たすCADソフトウェアを探してきました。

・お客様のCADデータとの互換性が高いこと(つまり業界のデファクトスタンダードであるAutoCADのDWGファイル形式を問題なく扱えること)

・自動化ができること(マクロやAPIが充実していること)

・世界の市場シェアが低すぎないこと(マイナーだと生産停止の恐れがあるため)

・AutoCADと比べて安いこと

 いろいろなCADソフトウェアを調べた結果、弊社ではDraftSightのProfessional版を選定して利用しております。ちなみにAutoCADの年間使用料金は71,500円で、DraftSightの年間使用料金は35,925円ですのでおよそ半額です。

 さて、今回弊社では生産性向上のためにCADの作図作業の効率化を図るべく、DraftSightでAutoLISPを使った自動化を行いました。その際、DraftSightでAutoLISPを使うための情報がとにかく少なかったため、こちらの記事にまとめておこうと考えた次第です。

 AutoLISPプログラミングそのものに関する情報は、AutoCAD向けに説明したサイトが多数あるためそちらに譲ります。本記事ではAutoLISPプログラムをDraftSightで動かす方法についてのみ説明いたします。

1.DraftSightでAutoLISPプログラムを動かすには

 メニューから ツール → アプリのロード を選択し、AutoLISPファイル(.lspファイル)を開くと実行されます。

2.DraftSightの起動時に任意のAutoLISPプログラムが自動的に実行されるようにするには

 まず、メニューから オプション を選択し、

ファイルの場所 → システム → サポートファイルの検索パス を開いてパスを確認します。

(例)

C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\DraftSight\22.0.1022\Support\

C:\Program Files\Dassault Systemes\DraftSight\Default Files\Support\

 おそらくUsers配下のフォルダの方に、以下の内容が書かれたstart.lspというファイルがあるはずです。

;;; START.lsp for DraftSight

;;; ==============================

(if (findfile "startup.lsp")

(load "startup.lsp")

)

 これを見ると、同じフォルダにstartup.lspというAutoLISPプログラムがあれば自動的に読み込まれるようになっています。したがって、このフォルダにstartup.lspというファイルを作り、その中へ起動時に自動実行したいAutoLISPコードを書けば解決です。

 以上、DraftSightでAutoLISPを使うための情報でした。日本語はおろか英語でもネットで情報が見つけられなかったため、誰かのお役に立てば幸いです。