山十佐野製作所の年末年始の休業日は
2022年12月30日(金)~2023年1月4日(水)
となります。何卒よろしくお願いいたします。
(株)山十佐野製作所のブログです。 静岡県富士市を中心に、富士宮市、沼津市、静岡市、そして神奈川県や東京都、さらには全国のお客様にタンクやパイプを始めとするロール曲げ・製缶加工品を提供しています。 Twitterアカウント @yamajusano
「曲がった板を平らにしたいのですが、ロール曲げでできますか?」
このようなお問い合わせを時々いただくことがあります。
条件によっては可能です。
種明かしをしてしまいますと、下図のように板を裏返した状態で機械に入れることができればロール曲げで板を延ばして平らに近づけることができます。
理屈はこれだけです。同業他社が見ているかもしれないのにやり方を公開してしまって良いのかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。理屈は簡単ですが、実際にやるのは非常に難しいのです。普通のロール曲げは平らな板の状態から円筒状(またはアーチ状)に曲げます。この工程は単純な形状であればNC化できていて、自動機械も存在します。
一方ですでに変形した板を平らにする場合は、まず初期条件が不明です。どの程度曲がっているのか、一定のRで曲がっているのか、ねじれはないか、摩耗して板厚が薄くなっていないか、経年劣化で板の性質が変わっていないのか、など、挙げればキリがありません。
板を平らに伸ばす加工は、押した(曲げた)時の板の戻り具合を見ながら押す位置や量を調整したり、曲げる方向を変えたり、数値では表せない”カン”に頼った加工になります。いわゆる職人技と呼ばれるもので、自動化は不可能です(※)。
(※AIが発達すればセンサーと組み合わせることで実現可能かもしれませんが、ニーズに対して割に合わないので誰も開発しないと思われます。)
このように、板を平らに伸ばす加工は実際にやってみないとどこまで平らにできるのかわかりません。極端なことを言えば可否すらもお答えできないため、事前にお見積りすることも不可能です。できるとすれば”これ以上平らに近づくことはない”と判断できるまでの加工時間を見積もることぐらいでしょうか。
新品の板を曲げれば済む話ではありますが、このまま円安と資源不足が続いた場合、在庫不足で板がすぐ手に入らなかったり、高過ぎて予算オーバーになってしまったりといった事情で、既存の板を再利用したいというニーズが増える時代がやってくるかもしれません。
そのような時代に必要な技術力を山十佐野製作所は持っております。今後も社会の役に立てるよう自分たちの技術力を向上させ、またこの技術を次の世代に継承できるよう努力してまいります。
テーパー管(レジューサー/コーン)は形状によってロール曲げ可能です。陣笠は全く加工できません。
テーパー管がロール曲げ可能なので似たような形状の陣笠もロール曲げできるのではと思われることがありますが、機械の構造上不可能です。
まず、3本ロールでどのようにテーパー管を曲げているのかを説明します。下図をご覧ください。
2つめの画像は真横からみたところです。このように、トップロール(上のシリンダー)を傾けて小径側だけが強く曲がるようにして加工しています。
では同じ方法で陣笠を曲げようとするとどうなるでしょうか?わかりやすいようにトップロールを半透明にしてみました。
ご覧の通り、このままトップロールを下げると陣笠の頂点付近が曲がってはいけない方向に曲がってしまいます。したがって陣笠は3本ロールでは加工不可能です。
では同じテーパー管でも曲げられるものと曲げられないものの差はどこにあるのでしょうか?
テーパー管の小径を徐々に小さくしていくと、やがて直径Φ0mmに近づいて陣笠になります。可能・不可能の境目はそのどこかにあるはずです。テーパーロール曲げが不可能となる条件は以下の通りです。
条件1)小径にトップロールが入らない。
当たり前ですが、トップロールより小さな直径に曲げることはできません。(陣笠もこの条件に当てはまります。)
条件2)小径と大径の差が大きい。
差が大きければ大きいほど、小径側だけを強く、大径側を弱く曲げる必要がありますので、トップロールを大きく傾けなければなりません。しかし、機械の構造上、傾けられる角度には限界があります。
また、傾ければ傾けるほど機械に(油圧シリンダーに)高負荷がかかります。メーカーからは「通常の円筒の2倍~3倍の負荷がかかると考えてほしい」と言われています。曲げに必要な力は大雑把に板厚の2乗に比例しますので、テーパーロール曲げの可否を大雑把に調べたい時は、こちらのロール曲げ可否自動判定で板幅を実際の1.4(√2)倍~1.7(√3)倍で入力してみるという方法があります。ただ、残念ながら正確な可否判定は難しいというのが正直なところです。
弊社にお問い合わせいただいた場合は、過去の加工実績データベースから類似形状を一瞬で検索できるシステムも使って総合的に可否判断をしております。その結果、弊社の3本ロールで加工できないと判断した場合は、協力業者でのプレス曲げ(FR曲げ)でのお見積りを提案させていただいております。
全ての曲げ加工に対応することができず大変申し訳ございませんが、何卒ご了承いただけますと幸いです。
ロール曲げ加工は円筒やテーパー管など単純な幾何学形状を加工するため、時々"t6、外Φ300、高さ200"など言葉だけの仕様で発注がかかることがあります。円筒の場合はあまり問題になることはありませんが、テーパー管の場合、特に板が厚い時は注意が必要です。
下図をご覧ください(クリックすると大きく表示されます)。
A、B、どちらも言葉だけで表そうとしたら”板厚t12、小径外Φ150、大径外Φ200、高さ50”となると思います。しかし、Aは曲げ終わった時点で高さが50mmになるのに対し、Bは下の部分をグラインダーで削らなければ高さ50mmになりません。
両者は製品形状が違うので板金展開形状も違ってきます。
パイプ(円筒)の板金展開は板厚の芯の直径に円周率を掛ければ計算できます(中立線のずれは無視できると仮定して)。テーパー管の板金展開も基本的な考え方は同じです。
上図にはAとBそれぞれの板芯の直径が書かれています。両者は違っているので展開形状も違ってくるのです。
弊社では特に指定がない場合はAで展開をしております。理由は、こちらの形状はそのまま組めば高さ50mmを確保しつつ、しかも自然開先になるからです。
一方でBは下部をグラインダーで削って高さを合わせなければならないだけではなく、必要に応じて開先も取らなければなりません。
弊社では常にお客様の手間をできるだけ減らすことを考えて提案をさせていただいております。
パンチングメタルはロール曲げ可能ですか?
よくお問い合わせいただく質問です。一言でお答えすると「ロール曲げ可能」ですが、R精度は通常の鋼板とは違ってしまいます。
パンチングメタルの中には、下図にように板の縁に穴のあいていないものがあります。(耳付などと呼ばれます。)
このような板は、穴のあいている部分とあいていない部分で板の強度が全く違うため、境目のところで折れたようになってしまいます。
耳付の板は、究極に単純化すると下図のような板だと考えることができます。
この形状ですと、スリットを入れればロール曲げできる?の記事で説明されている通り、縁の部分はボトムロールにかかりませんので、折れて平らなまま残ってしまうということです。
防止策としては耳のない板を用意するしかありません。ただし、実際の製作では「縁が曲がっていなくても関係ない。R精度は気にせず、無理やりにでも溶接できてしまえばOK。」ということもあります。状況に応じてご検討いただけますと幸いです。
Hardox(ハルドックス耐摩耗鋼板)の溶接に挑戦いたしました。
Hardox®耐摩耗鋼板はスウェーデン・ストックホルムに本社を置く鉄鋼メーカーであるSSAB社の鋼材で、世界有数の耐摩耗鋼板です。建機や破砕機など、摩耗が激しい部品で使用されています。国産で言えば日本製鉄社のABREX、あるいはJFEスチール社のEVERHARDが同等品となりますが、それぞれ特徴に若干の違いがあるようです。
今回溶接に挑戦したのはHARDOX450という種類で、ガイドラインを参考にして溶接したところカラーチェックで問題ない程度に仕上がりました。板厚は16mmです。
山十佐野製作所では今後も珍しい材質の加工でも積極的に挑戦してまいります。
山十佐野製作所ではいただいた図面をもとに3Dモデリングから板金展開まで行っております。
例えば以下のような製品があったとします。
今回モデリングしたサンプル3Dデータ(STEP形式)ならびに板金展開データ(DXF形式)は以下のリンクからダウンロード可能です。どうぞご自由にご確認いただけますと幸いです。
株式会社山十佐野製作所サンプル3Dデータ・板金展開データ(ZIPファイル)
弊社はプラントエンジニアリングをメインとした製缶板金業ですので、工場の大きなタンクなど一品モノの部品を製作しております。量産モノには”不良率”という考え方がありますが、一品モノの場合は0%か100%しかありません。毎回違うものを作るわけですから、いかに正確に製作するかが品質保証のカギとなります。そのためには、まずは形状を正しく理解できなければ話になりません。
最終製品は3次元の物体です。それを伝えるための手段として図面が存在しますが、3次元を2次元に置き換えているため理解するのに苦労する時があります。そのような時、3Dデータをみれば一目で形状を理解できるでしょう。ミスが減り、時間短縮に繋がります。
今後も山十佐野製作所では3Dの力を製缶板金業に生かして、お客様のために効率化を図っていきたいと考えております。