2016年12月に「機械に置き換えられる仕事、置き換えられない仕事」、2017年4月に「「わたしの仕事、 ロボットに奪われますか?」チェックツール」という記事を書きました。
それから約10年が経ち、生成AIが一気に普及しました。当時書いたことが今どうなっているのか、答え合わせをしてみたいと思います。
10年前に書いたこと
当時の記事で書いたことを、ざっくりまとめると次の3つです。
1)ロール曲げは、今のところAIに置き換えられる心配は少ない
単純な円筒であれば数値で予測できますが、実際には重力による垂れや機械の個体差など、様々な条件が加わって「予測できない作業」になります。いわゆる職人技です。
2)経営者は、置き換えられる仕事は積極的に置き換える
効率化を図って会社を成長させるために、AIに置き換えられる仕事は積極的に置き換えるという視点が求められる、と書きました。
3)AIが普及すると資本力勝負になり、小規模企業には危機的
技術力での差別化が難しくなり、どれだけAIを導入できるかという資本力の勝負になってしまうのではないか、と心配していました。
そして2016年の記事は「さて、自分が現役の間にそのような時代が来るでしょうか。」という一文で締めくくっていました。
答え合わせ1:ロール曲げは、まだ人の仕事
2019年には、ものづくり補助金を活用して、既存のベンディングロールに自動化装置を追加しました。ただ、この装置を本格的に稼働させるのは、まだこれからです。
また、テーパー管(コーン、レジューサー)のロール曲げは、トップロールを傾けて小径側だけを強く曲げる加工で、自動化されておらず、今も職人の判断に頼っています。クレーンで吊りながら加工しなければならないものも、同じく自動化できていません。
この部分については、10年前の予想どおりと言ってよさそうです。
答え合わせ2:先に変わったのは、机の上の仕事
予想と違ったのは、どこから先に置き換わったかです。
当時の私は、工場の中の仕事がいつAIに置き換わるのかを気にしていました。ところが実際に先に変わったのは、事務所の中の仕事でした。
弊社では現在、次のような仕事をAIに任せています。
- 見積の計算をする
- 提出する書類に間違いがないかを点検する
- 展開寸法を検算する
- 3Dモデルに誤りがないかを確認する
- 仕入先から届いたFAXの金額を読み取る
- 販売管理ソフトに入力する内容の下書きを作る
AIが下書きを作り、人間が確認して決める、という分担です。
振り返ってみると、2016年の記事で紹介したグラフでも、「データ収集」や「データ処理」はAIに置き換えやすい仕事として挙げられていました。当時の私は、自社にもAIに任せられる「データ収集」や「データ処理」がこんなにあるとは気づけていませんでした。グラフはちゃんと答えを示していたのかもしれません。
世の中でも、同じような流れが起きているようです。アメリカでは、AIに代替されにくいブルーカラー職の賃金が上がり、「ブルーカラービリオネア」と呼ばれる現象が注目を集めていると報じられています(東洋経済オンライン、2026年2月)。日本でも、今ブルーカラー職で働いている人の約5人に1人はホワイトカラーからの転職者で、20代では「AIに代替されにくい安心感があるから」が転職理由の上位に挙がった、という調査があります(レバレジーズ、2025年4月)。
机の上の仕事から先に変わり、現場の仕事が見直されている。10年前のグラフが示していたとおりの流れです。
答え合わせ3:資本力勝負には、ならなかった
2017年に心配していた「資本力勝負」は、少なくとも今のところ外れました。それも良い方向にです。
今の生成AIは、大企業でなくても月額の利用料で使えます。弊社のような小さな会社でも、大きな設備投資をせずに、すぐに使い始めることができました。
2022年に作ったITレポートでは「第2第3のIT人材を採用・育成する」と書いていましたが、AIエージェントが登場したことで、人を増やさなくても取り組めることが大きく広がりました。
その代わりに大事になったと感じているのは、AIの出した答えが正しいかどうかを判断できることです。AIは間違えることもあります。展開寸法が合っているか、その曲げ方で本当に曲がるのか、といった判断には、これまで積み重ねてきた知識と経験が欠かせません。技術力での差別化が難しくなるどころか、技術を持っている会社ほどAIをうまく使える、というのが今の実感です。
まとめ
「自分が現役の間にそのような時代が来るでしょうか」という問いへの答えは、「半分は来た」です。ただし来たのは、思っていたのとは逆の、机の上からでした。
また10年後に、答え合わせをしてみたいと思います。



