2022年1月6日木曜日

ロール曲げのスプリングバック

曲げ加工後に発生するスプリングバック(曲げの戻り)という現象があります。

JFEスチール株式会社様の資料によると、折り曲げのスプリングバック量は以下の式で計算できるとのことです。

JFEの耐摩耗鋼板 エバーハード 施工ガイドライン ̶ 曲げ加工 ̶ (jfe-steel.co.jp) より引用

つまり、板のサイズや曲げ寸法が同じであっても、材質(引張強度とヤング率)によってスプリングバック量は変わることになります。これは実際に曲げている肌感覚でもよくわかります。

■鉄よりチタンの方がスプリングバックが大きい

純チタンであるTP340は引張強度が340~510N/mm2で、平均すればSS400とあまり変わらないと言えるが、ヤング率は半分ぐらいしかないので、スプリングバックは約2倍になるはず。

→ 弊社のベンディングロールのメーカーの演算ソフトでは、TP-340の場合は内径を60%で入力するようになっております。(もしΦ1000の演算をしたいのであれば、Φ600と入力する。)つまり、スプリングバック量を1.7倍と想定していることがわかります。また、弊社の経験上、チタンのスプリングバックは時間差で現れる特徴もあります。たとえピッタリの円筒に曲げたとしても、一晩経つと口が開いてしまっていることがあるのです。(この現象は機械的性質の数値で表すことができるのかわかりません。もしご存じの方がいたらご教示いただけますと幸いです。)

■耐摩耗鋼(ABREX、EVERHARD、HARDOX等)は鉄よりスプリングバックが大きい

例えばABREX400は引張強度が1259N/mm2で、鉄の約3倍である。ヤング率は情報が見つからなかったが、同じ鋼なのでSS400とさほど変わらないと予想される。もし同じだとすると、スプリングバックは鉄の約3倍大きいということになる。

→ 耐摩耗鋼は曲げ過ぎたかなと思うぐらい曲げても、バネのように戻ってしまいます。下の写真は過去に弊社で加工した時のものです。



いかがでしょうか?

かなり重なった状態になるまで曲げても、力を抜くとちょうどよいぐらいの円筒になっているのがご覧いただけるかと思います。

計算式があるとは言え、スプリングバック量を正確に予測することは困難です。これもロール曲げ加工の自動化が難しい理由の一つなのかもしれません。

弊社は今後も理論と実践を組み合わせてロール曲げ加工の技術力を磨いてまいります。

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