例えばパイプが何本も飛び出しているタンクのような製品を作る時、胴体をロール曲げで製作するにあたって、板を曲げてから穴をあけるよりも、先に板に穴をあけてから曲げた方が効率が良いのは間違いありません。ただ、そのような板をロール曲げすると穴付近の真円度が落ちてしまう、もしくは形状によっては全く曲がらない可能性もあります。
そこで、次善の策として
1)切り落とした丸板を点付しておいたらどうか
2)完全に穴をあけるのではなくスリットを入れるだけにしたらどうか
という話になります。
確かにこれらの方法であれば完全に穴のあいた板を曲げるよりは真円度への影響が少なくなるかもしれません。しかし、板が厚くなればなるほど(加わる力が大きくなるので)やはり変形して真円度が落ちてしまいます。
写真は厚み20mmほどの鉄のスリット入り板をロール曲げしたところです。板を曲げると外径面が引き延ばされますので、スリットの幅が広がって見えるのがわかります。
さらによく見ると、点付けが取れてしまったり、スリットで残しておいた部分が断裂してしまったりしています。
穴以外にも溝や切欠など様々な加工が円筒に加わる場合があります。効率を求めるために曲げより前に加工をするのか、精度を求めるために曲げより後に加工をするのか、このトレードオフは常に存在する問題です。弊社ではお客様と打ち合わせを行い、できる限り最終的な製品の使用目的を理解し、最適な製作方法の一環としてのロール曲げ加工となるように努めてまいります。