「曲がった板を平らにしたいのですが、ロール曲げでできますか?」
このようなお問い合わせを時々いただくことがあります。
条件によっては可能です。
種明かしをしてしまいますと、下図のように板を裏返した状態で機械に入れることができればロール曲げで板を延ばして平らに近づけることができます。
理屈はこれだけです。同業他社が見ているかもしれないのにやり方を公開してしまって良いのかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。理屈は簡単ですが、実際にやるのは非常に難しいのです。普通のロール曲げは平らな板の状態から円筒状(またはアーチ状)に曲げます。この工程は単純な形状であればNC化できていて、自動機械も存在します。
一方ですでに変形した板を平らにする場合は、まず初期条件が不明です。どの程度曲がっているのか、一定のRで曲がっているのか、ねじれはないか、摩耗して板厚が薄くなっていないか、経年劣化で板の性質が変わっていないのか、など、挙げればキリがありません。
板を平らに伸ばす加工は、押した(曲げた)時の板の戻り具合を見ながら押す位置や量を調整したり、曲げる方向を変えたり、数値では表せない”カン”に頼った加工になります。いわゆる職人技と呼ばれるもので、自動化は不可能です(※)。
(※AIが発達すればセンサーと組み合わせることで実現可能かもしれませんが、ニーズに対して割に合わないので誰も開発しないと思われます。)
このように、板を平らに伸ばす加工は実際にやってみないとどこまで平らにできるのかわかりません。極端なことを言えば可否すらもお答えできないため、事前にお見積りすることも不可能です。できるとすれば”これ以上平らに近づくことはない”と判断できるまでの加工時間を見積もることぐらいでしょうか。
新品の板を曲げれば済む話ではありますが、このまま円安と資源不足が続いた場合、在庫不足で板がすぐ手に入らなかったり、高過ぎて予算オーバーになってしまったりといった事情で、既存の板を再利用したいというニーズが増える時代がやってくるかもしれません。
そのような時代に必要な技術力を山十佐野製作所は持っております。今後も社会の役に立てるよう自分たちの技術力を向上させ、またこの技術を次の世代に継承できるよう努力してまいります。