ロール曲げ加工を行うと板に反りが生じることがあります。書籍『塑性加工』によると、これは板厚が板幅の1/10より小さい時に発生する物理的な現象です。
朝倉健二『塑性加工』(共立出版株式会社)P99より
ロール曲げ時の反りは塑性加工による物理的現象であり、加工の仕方で防げるものではありません。したがって旋盤前の素管を作るための厚板曲げの時には特に注意が必要です。下図をご覧ください。
一般的にこのリング形状の外径は板の端部であるΦA寸法で計測します。しかし、板に反りが発生していると、板幅の中央付近のΦBはΦAよりも小さくなっているはずです。そうなると、このリングの外面を旋盤で削って最終形状に仕上げようとした時に、「板幅の両端付近では削り代が足りるが、板幅の中央付近では足りない」ということが起こり得ます。このように、板幅/板厚の値が10より小さい時には反りも考慮して多めに削り代をみておくことが必要です。
最後に、以前にチタンの板を曲げた時の写真を紹介します。
板厚に対して板幅が十分大きいにも関わらず、板幅の中央付近に向かって大きく反ってしまっているのがご覧いただけると思います。これはおそらくチタンの激しいスプリングバックが影響していると考えられます。このように特殊な材質の時にも反りを考慮した設計が必要です。