例えば円筒形状を2分割にする方法は下図のような2通りがあります。1つ目は半円を2個にする方法で、もう1つが幅を半分にする方法です。
結論としては、これらの2つの分割方法のうち、分割することによって曲げられる可能性が出てくるのは右側の分割方法(板幅を分割する方法)のみです。なぜでしょうか?
これ、ロール曲げで曲がりますか?の記事より、ロール曲げできない理由は以下のようにまとめられます。
板形状に関すること
①板の幅が広過ぎる
②板が厚過ぎる
③板の長さ(弧長)が短過ぎる
曲げ形状に関すること
④直径が小さ過ぎる
機械の能力に関すること
⑤機械の力が足りない
これらの要因のうち、板を分割することで変えられるのはどれでしょうか?
まず板形状に関して、②の板厚は変更できません。また、分割しても④の直径は変わりません。③の板の長さ(弧長)は変えられますが、分割したらさらに短くなってしまうので逆効果です。
一方で①板幅が広過ぎて機械に入らない時は、幅を分割して短くすることで機械に入るようになれば曲げられる可能性は出てきます。しかしこの時点ではまだ可能性です。機械に入るようになった上で、⑤機械の力が足りるのかどうかも確認する必要があります。
さて、⑤機械の力が足りるのかどうかについて考えていきます。ロール曲げで板を曲げる仕組みはプレスブレーキと同じ仕組みです。「端だけ曲がらない」のはなぜ? ロール曲げに必要な力とはで紹介したように、プレスブレーキで板を曲げるのに必要な曲げ圧力は以下の計算式で求められます。
この式から、曲げるのに必要な力について以下の4点が言えます。
1)曲げ板幅(L)に比例する。
2)板厚(t)の二乗に比例する。
3)材料の引張応力(σ)に比例する。
4)Vダイの幅(V)に反比例する。
され、これらの要因のうち、板を分割することで変えられるのはどれでしょうか?
板をどう分割しても2)板厚と3)引張応力は変わりません。また、3本ロールの場合は4)Vダイ幅はボトムロール間隔ですので変更不可能です。したがって、やはり1)板幅を変えることでしか曲げ圧力は変わりません。曲げ圧力は板幅に比例しますので、板幅を半分にすれば板を曲げるのに必要な力も半分に減ることになります。
では、弧長を半分にしたら(半円にしたら)どうでしょうか?
計算式に弧長が存在しないことから、半円にしても、1/3円にしても、もっと細かく分割しても、曲げ圧力は全く変わらないことがわかります。
以上より、
1枚ではロール曲げできない時、弧長を分割しても曲げられる可能性は全く変わらないが、板幅を分割すれば曲げられる可能性は出てくる
という結論に至ります。
全ての円筒形状をロール曲げすることができず大変申し訳ございませんが、何卒ご了承いただけますと幸いです。
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