ものづくりにおいて最も重要なのは「曖昧さの無いコミュニケーション」です。いくら完璧に美しいものを作っても、いくら素早く完成させても、出来上がったものがお客様のほしいものと違ったら全く意味がありません。
曖昧さの無いコミュニケーションを図るためには曖昧さの無いコミュニケーションツールが必要があり、その1つが図面です。したがって本来であればどのような時でも図面でやり取りをすることが望まれます。なぜなら、規格に則って図面を描けば曖昧さが無くなるようになっているからです。しかし現実には急いでいて電話やメールの文言だけでやり取りをすることもあります。
例えば「厚み6mm、幅50mm、内Φ500」と聞いて、皆さんはどのような形状を思い浮かべますか? 考えられるのは以下の2通りだと思います。
弊社のように普段3本ロールで曲げ加工をしている人間はAを思い浮かべる可能性が高いです。一方で普段レーザーで板を切っている方達はBを思い浮かべるかもしれません。つまり、「厚み6mm、幅50mm、内Φ500」という表現には曖昧さが残ってしまっています。 さて、前置きが長くなりました。今回の記事の本題は、3本ロールで曲げられる形状についてです。前述のA、Bのうち、Aは3本ロールで曲げられますが、Bは曲げられません。
Aの場合は板の6mmの部分を上下のロールでしっかりと挟んで固定しながら曲げることができます。一方でBの場合は板の50mmの部分を上下のロールで挟んでいる状態となり、非常に不安定です。そこで、Bは3本ロールでではなくリングフォーマー等と呼ばれる、シリンダーに溝が入った機械で加工されます。
残念ながら弊社ではこの機械は所有していないため、外注での対応になってしまいます。
まとめ
1)「厚み6mm、幅50mm、内Φ500」のように言葉だけで形状を表現しようとすると曖昧さが残ってしまい、今回のケースで言えばAとBの2通りが考えられる。
2)Aは3本ロールで曲げられるが、Bは曲げられない(別の機械が必要)。
最後にまた余談ですが、一般的にAの曲げ加工は「ロール曲げ」「円筒曲げ」「バンド曲げ」「板巻き」、Bの曲げ加工は「フランジ曲げ」「リング曲げ」等と呼ばれます。ただ、この記事の中で敢えてこれらの呼称を使わなかったのは、人によって定義が違っていて、例えばBの形状を「ロール曲げ」と呼ぶ方がいたりするからです。
人間は思い込みの生き物です。自分が発注する時も受注する時も、
「自分が普段使っている言葉は本当に一意に定義されているのか?」
「規格として定義されているのか? 辞書で定義されているのか?」
「表現に曖昧さは残っていないか?」と常に考えることを目指していきます。
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